The Rotters' Club / Hatfield And the North | Blue Monday だより

The Rotters' Club / Hatfield And the North

Hatfield and the North
The Rotters' Club

 カンタベリーミュージックというものがある。イギリスのカンタベリーという都市を中心に栄えた音楽ジャンルだ。その特徴を説明しようとチャレンジする人はたくさんいたが,特徴があるにもかかわらずキッチリ説明できる人はいない。音楽ジャンルなんてそういうものだ。とりあえずここでは,初心者向けに「プログレの一つの流れで,ジャズの影響を強く受け,かつイギリス人らしい上質なユーモアを持つ音楽」とでもしておこうか。


 一つ言い忘れた。カンタベリーミュージックの重要な要素に人脈というものがある。そもそもカンタベリー派は,Wild Flowersというグループの人脈に連なる人達である。Wild Flowersは,その後Soft MachineとCaravanという二つの偉大なグループを生んだ。そしてその二つのグループは,更に・・・と続くわけだが,このHatfield And the Northもカンタベリー人脈のスーパーバンドだ。


 正直なところ昔は,Soft Machineは大好きだったけど,Caravanの人脈に連なるバンドはそうでもなかった。このHatfield And the Northもそうだ(人脈的にはSoft Machineとも連なるけどね)。だってさあ,若者が好きなアウトサイダー的な要素が少ないんだもの。ビート詩人達の影響をもろに受けたSoft Machineとその人脈の人達に対して,「大人し過ぎる」と感じたものだ。


 しかし,そこがこのアルバムの肝だ。優しくて知的。メンバーがケンカを始めそうな緊張感のある名盤というものは多数ある。しかし,複雑怪奇な楽曲の中で,各楽器が個性を主張しつつも非常に穏やかな調和を生み出しているという,ロックの歴史をみても極めて稀な名盤である。


 とにかくどうやって作曲してるのか?譜面はあるのか?セッションにどのくらい時間をかければこういう複雑なアンサンブルができるのか?等々多くの疑問が涌いてくるロックの一つの頂点と言える大名盤です。