Bleach / Nirvana | Blue Monday だより

Bleach / Nirvana

Nirvana
Bleach

 Nirvanaがあそこまでヒットするとは思ってませんでした。少なくとも『Nevermind』がまだ出ていないこの1stアルバムの頃までは。


 私は80年代のアメリカのインディーズシーンには強い思い入れがある。ソニック・ユースを筆頭とした当時のアーティストの作品は,全部ゴミと紙一重で最高に素晴らしい。だからSoundgardenやMudhoneyが出てきたときも,そういうゴミと紙一重の作品群と同じように楽しんだ。そしたらシアトル出身のSoundgardenやMudhoneyには,何やら「グランジ」とかいう名前が付いたではないか。なんて素晴らしい呼称だろう。「パンク」と同じくらい素晴らしいではないか!


 Niravanaそのものについてはここで説明する必要はないだろう。しかし,この1stアルバムについては書くことがある。


 これは,典型的なグランジをイメージさせる音だ。メーターの針が明らかにレッドゾーンまで突入して振り切ったかのような歪んだ音。そしてヘヴィーメタルのように湿っぽくなく,乾いた感触がいい。プロデュースを担当したジャック・エンディーノという人は,グランジを代表するプロデューサーだが,音質に関して言えば多分彼の最高傑作だろう。Nirvanaのアルバムは,2ndがブッチ・ヴィグ,3rdがスティーヴ・アルビニにとどれも個性的なサウンドだが,個人的な好みをいえば,この1stが一番音が素晴らしいと感じる。


 次はドラムのユニークさだ。一般的には弱点とされているここでのドラムだが,シンプルで淡々とビートを刻むところが面白い。そりゃ迫力満点のドラムってのもいいもんだが,カート・コバーンの激しさを一歩引いたところでクールダウンさせている点が評価できる。バスドラが全体の迫力を増さずに「点」で謙虚に鳴っているところも最高だ。一部のジャーマンロックやYMOの高橋幸宏みたいなドラムのグランジ版だと言えばわかりやすいか?


 そして最後に楽曲が素晴らしい。オルタナティヴロックは,いつの間にか鬱屈した精神の吐露という様式を背負ってしまった。その様式に一番の影響力を持ったのは『Nevermind』なんだろうけど,ここではそうじゃない。「みんな,」と呼びかけることもなければ,「俺は,」と叫ぶこともない。いたってクールな曲ばかりだ。しかし,そんなクールな中にもカートの個性は十分に発揮されていて,私はここでのカートこそが最も魅力的だ。


 ライヴでドラムセットにダイブして,クールにしかめっ面を出してみせる。しかし,それはカートのユーモアなのだ。だからそのときの顔はどこかニヤついてるでしょ。それこそがパンクから10年以上経過した時代のロックというものだ。イギー・ポップみたいな本物じゃないけど,私はそこにこそ惹かれる。



ニルヴァーナ
インセスティサイド

↑レア曲集。大好きな名曲「Sliver」を収録。


Nirvana, Jesus Lizard
Oh the Guilt/Puss

↑『Nevermind』から散々待たされた新曲は,Jesus Lizardとのスプリット。『In Utero』の曲とも全く違う名曲。カップリングのJesus Lizardも最高。ただし,廃盤。今ならどれで聴けるのだろう?